【コラム】地球温暖化のお話(29)忍び寄るバッタの害

石津 顕

コロナウイルスによる新型肺炎の流行は一向に収まる気配がなく、さらに第2波の発生の心配もあります。その上にさらに新しい災害とも言えるバッタの襲来について前にお話ししました。
今年に入り、アフリカ東部で発生したバッタはエチオピア、ケニアに広がり、イエメンで繁殖したバッタはイラン、イラクに北上、さらに南アジアのパキスタンやインドまで飛来し、さらに中国に侵入する恐れが出ています。
サバクトビバッタ大発生の一番の引き金は雨です。インド洋で発生したサイクロンがアラビア半島で大雨を降らせました。乾燥地帯に大雨が降ると、ほそぼそと生きていたサバクトビバッタが繁殖を始めます。
一方、南米のパラグアイでもサバクトビバッタが大量発生。1日100~150キロを移動し、わずか1日でサトウキビやトウモロコシなど約3万5000人分の農作物を食い荒らしながら、先日、アルゼンチンに南下。さらにブラジル、チリなど南米全体に広がる恐れが出ています。
この世界的なバッタ被害、日本は大丈夫なんでしょうか。日本への影響について農林水産省では「これだけ世界各地で大量発生するのは珍しいことだが、現時点では影響はない」と説明しているようです。
しかし、一方では対岸の火事ではないとも心配されています。今は新型コロナウイルスの影響で人の移動と物流が止まり、世界中で農業生産が落ち込んでいます。
以前から世界的に食糧危機が懸念されていた中、コロナ、バッタショックで事態が悪化すれば、生産国は輸出規制をするでしょう。まずは輸出を止めて食糧を確保し、自国を守ろうとします。いくら日本にお金があっても手に入らなくなります。
日本は小麦、大豆、トウモロコシの輸入の大半をアメリカに頼っています。バッタの被害で世界中の生産量が減少すれば、流通量は少なくなり、価格は高騰、奪い合いになります。輸入依存度が高い家畜の飼料が影響を受けるのは必至で、ジワリジワリとボディーブローのように私たちの生活に響いてきます。
日本では農産物の自由化を進めてしまったため、自給率が下がり、輸入に依存せざるを得なくなっています。だからこういう事態が起こると耐えきれなくなります。
過去には、トノサマバッタの大発生が日本の人々を苦しめてきた歴史があり、1880~84(明治13~17)年には、北海道で大発生して大きな農業被害をもたらしています。地球温暖化は思わないところで私たちに影響することを決して忘れてはいけません。
こんなすさまじいバッタではなく、静かに鳴くキリギリスを歌った歌が百人一首に。
“きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む ”
後京極摂政前太政大臣『新古今集』

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