【コラム】地球温暖化(11)生き物たちの異変(3)

石津 顕

産経新聞連載の生き物たちの異変のシリーズでは、たくさんの異変が紹介されています。今回はその中から身近なものを選んでごく短くご紹介します。
日本酒用の稲・山田錦の主産地は兵庫県の東南部です。山田錦の8割を主産する兵庫県東南部は、室町時代から酒の名所として知られる土地です。日本各地の蔵元が必要としている山田錦が小粒化しています。稲の穂が出る出穂(しゅっすい)期は8月下旬ですが、夜の気温が高いと、稲が栄養分を消費してしまい、酒造に使うデンプンの詰まった大きな米粒ができなくなるのです。また、デンプンの品質も低下します。「20~30年で平均気温が2、3度上がると、今の品質を維持するのは厳しいかもしれない」そうです。
キノコによる桜の被害が目立ち始めたのは数年前からです。気象情報会社「ウェザーニューズ」が2007(平成19)年に行った調査でも、身近な桜にキノコが発生しているという報告が全国から約300件寄せられています。
食用にもなるキノコのナラタケが幹や根の道管や師管に菌糸を張ったため目詰まりが起こり、根の大半が白く朽ちるというのです。温暖化によって極端な高温や乾燥が続くと他のキノコが淘汰され、じっと潜んでいたナラタケやベッコウタケなどが一気に発生するという見解だそうです。
「近年はスギにとって、成長しやすい環境になっています」。スギ花粉の飛散量が爆発的に増え続けている現状の背景に、温暖化による気候の変化があるとみられています。
温暖化による平均気温の上昇や日照時間の確保が、スギにとっての好材料となっているというのです。
花粉症の原因植物は60種ほどで、日本ではスギ花粉症が多いのです。
温暖化が進んだことで梅雨期の雨の降り方に変化が起こり、花粉量をさらに増やす方向に作用しているのです。温暖化とともに6~7月の梅雨の天候が変化しています。昔の梅雨は、雨や曇りで太陽が顔を出さない日々が続きましたが、近年はスコールのような集中豪雨と晴天を繰り返す気候に変化しています。「雨量は以前と変わらないけれど日照時間が増え、スギの花がたくさんできるようになっています」 一方で、スギと温暖化との関係には、痛しかゆしのジレンマも存在します。 「二酸化炭素は主要な温室効果ガス。スギは成長が速い植物なので、二酸化炭素の吸収率が高く、温暖化対策にはもってこいの樹木なのです」温暖化と花粉症防止の両立を図るため、国などでは200ほどあるスギの品種中から、花粉が少ないタイプを選抜しています。
温暖化による生き物の異変は、そのどれもが私たちの生活に深く関係しており、その影響は気づかないところで、じわりじわりと迫って来ているのです。